定着率は「最初の90日」で決まる
社員が辞める理由はさまざまだが、私は現場を見ていて確信していることがある。それは「人が辞めるかどうかは、最初の90日でほぼ決まっている」ということだ。
面接や採用の段階では見えなかった“ズレ”が、入社後の数週間で明らかになる。そして、そこで何も手を打たなければ、本人の中では静かに「離職のカウントダウン」が始まっている。
問題は「辞める」と言い出すよりずっと前に、決意が固まっていることだ。
「放置」ではなく「観察」と「対話」

新入社員を“放置”してしまう現場は少なくない。忙しさを理由に十分なオンボーディングを行わなかったり、「慣れれば大丈夫」として丸投げしたり。だがそれは、船出したばかりの小舟に舵を与えず漂わせるようなものだ。
大事なのは“観察”と“対話”だ。最初の3ヶ月は、教えることより「感じ取ること」のほうが重要である。何に戸惑っているか、どこに不安を感じているかを言葉になる前に察知する必要がある。
離職率が高い会社は「孤独な新人」を生む

多くの企業は「定着率向上のための制度」を整えようとするが、実際に効果が出ている企業は、「人と人の関係性」に本気で取り組んでいる。
制度よりも、日常の小さな接点、声かけ、安心感の醸成。それが「居場所」をつくる。逆にいえば、最初の90日で孤独感を抱いた新人は、そのあとどんなに制度を整えても、心の距離が縮まることはない。
定着とは「仕組み」ではなく「感情の蓄積」
人は、“制度”ではなく“人との関係”によって職場に定着する。
入社初期の経験は、社員にとってその職場の“本質”を象徴するものになる。ここで信頼が育てば、それは5年10年という長期在籍の土台になる。
だからこそ、企業が本当に力を入れるべきは、「入社1日目からの90日間」なのだ。